2017年 07月 18日
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ステロイドは患者さんの味方!正しい理解で、有効活用

ステロイドは、元々は1950年頃にリウマチの内服薬として開発され、現在ではたくさんの医療現場で使われています。しかし、「ステロイド=怖い、危ない」というマイナスイメージを持つ患者さんは少なくありません。でも、正しい使い方をすれば、ステロイドは決して「怖い、危ない」薬ではありません。ステロイドの正しい知識を身につけ、効果を最大限に利用しましょう。
ステロイドが誤解される原因は?
「ステロイド=怖い、危ない」と考えられる理由で最も多いのは、副作用です。
そもそも、ステロイドは「飲む薬」として開発された薬でした。内服用のステロイドは作用が強く、全身への影響がありました。それが「怖い、危ない」というイメージを生んだのです。
しかし、その後にクリーム、ローション、軟膏タイプなど、「ぬるタイプ」である「ステロイド外用薬」が開発されたのです。外用薬は、内服用とは異なり、副作用がずいぶん少なくなりました。さらに、より安全面に配慮された、患部に作用後皮膚から吸収されると分解されて薬としての作用がなくなる外用薬「アンテドラッグ」も開発されています。
・ステロイドを使うと、皮膚が黒くなる?薄くなる?
「骨がぼろぼろになる」「皮膚の色が黒くなる」「顔が丸くなる(ムーンフェイス)」
これらの副作用は、強いステロイドを長期間に渡って内服したり、注射をした場合に、起こる可能性がある症状です。外用薬で同様の副作用を起こすには、全身に膨大な量を長期間塗布しなければなりません。
「皮膚が薄くなる」「ニキビができやすくなる」
ステロイド外用薬でも、長期間に渡って作用の強いステロイドを大量に使用した場合は、こういった副作用が起こる可能性があります。しかし、医師に指示された通り、正しい使用方法を守っていれば、副作用は高い確率で起こるものではありません。
・ステロイドの使用をやめると、症状がリバウンドする?
「ステロイド外用薬の使用を中止すると、症状がリバウンドした」と言う方がいますが、リバウンドではありません。それは「表面上は症状が治まっていても、皮下ではまだ炎症が残っていた」という状態です。これは、風邪が治りきっていないのに、薬を中止してぶり返すのと同じこと。中止したことで再び悪化したに過ぎません。
ステロイド外用薬のメリット
ステロイド外用薬には、たくさんのメリットがあります。
・部位、症状に応じた使い分け
ステロイド外用薬は、強さによって5段階に分かれます。
1.ストロンゲスト(デルモベート、ダイアコートなど)
2.ベリーストロング(フルメタ、マイザーなど)
3.ストロング(リンデロン、リドメックスなど)
4.マイルド(キンタベート、ロコイドなど)
5.ウィーク(プレドニゾロンなど)
1から3段階までは、主に胸、お腹、背中といった体幹に使用します。首や頭には、マイルド。ウィークは、目の周りへ主に使用します。
剤形には種類があり、主にクリーム、ローション、軟膏があります。クリームやローションは、伸ばしやすく使用感が良いことが特長。ローションは浸透性に富み、乾燥した患部に適しています。軟膏は、若干べたつきますが患部の保護作用があります。
部位や症状に応じて、作用の強さと剤形を選べます。医師と相談しながら、自分の病状に合ったステロイド外用薬を選ぶと良いでしょう。
・機能面での使いやすさ
ステロイド外用薬は適切な強さを選べば、即効性があります。早い人であれば、1日2日で効果が表れます。全身に対して作用してしまう、内服のステロイドに比べれば、ステロイド外用薬は局所的に使用できます。さらに、副作用が起こらないように研究も進んでいます。
・さまざまな疾患に効く
ステロイド外用薬は、炎症を一気に抑えてくれるため、年間を通してさまざまな皮膚疾患に使用可能です。春・夏には、虫刺され、そしてあせも。秋・冬には、乾燥肌、洗剤かぶれ、しもやけ。こういった軽度の皮膚疾患に対して有効です。さらに、紅皮症、水泡生、膿疱症、腫瘍性疾患、肉芽腫症といった疾患には、ストロングやベリーストロングクラスが適切です。軽度から重度まで多岐に渡る皮膚疾患をカバーした優れものです。
ステロイドを上手に使うコツ
ステロイド外用薬の使用方法を正しく理解すれば、効果を最大限に活かせます。
ここでは、押さえるべきポイントをいくつかお伝えします。
・塗る前の準備
使用前には、患部と手を清潔にします。水分をとって乾いた状態にします。塗布時に雑菌が入ることを防ぐためです。使う種類によって使用する部位が決まっているので、他の部位に薬がつかないよう注意してください。
・回数
悪化時には、1日2~3回程塗布します。症状が改善したら1日1~2回、より改善すれば1日1回と塗布回数を減らしていきます。症状に合わせて塗布回数を決めましょう。
・使用量
0.5gを目安に塗りましょう。0.5gは、指先の第一関節の長さ分チューブから出すくらい量です。1FTU(ワンフィンガーチップユニット)とも言います。0.5gでおよそ手のひら2枚分の範囲に塗布してください。多少べたつくくらいが適切な量です。塗る量が少なければ、ステロイドも本来の効果を発揮できません。
・部位
ステロイド外用薬は、塗る体の部位によって吸収率が違います。腕の内側の吸収率を基点にすると、頬部が13倍、首が6倍、背中が1.7倍と部位によって異なります。また、赤ちゃんや幼児は成人と比べ、まだ肌が薄く、成人よりも吸収率は高くなります。部位や症状、そして年齢に応じて、適切な強さのステロイドを選びましょう。
注意事項
・医師の指示を守る
ステロイド外用薬の使用上の注意点は、医師指示通りに塗ることです。
必要以上に強いステロイド外用薬を塗らない。
自己判断で、使用を中止・再開しない。
元から炎症が起こっていない部位には使用しない。
・皮膚感染症には効果なし、むしろ悪化
ステロイド外用薬は、水虫、タムシ、カンジダ症、とびひ、単純ヘルペスなどの皮膚感染症には効果がありません。これらの感染症は、病原体によって生じるもの。ステロイドは効果がありません。それどころか、免疫抑制作用があるステロイドは、体の中の病原体に対抗する力を抑えてしまいます。それによって病原体の増殖をうながし、むしろ症状が悪化してしまうこともあります。
・正しい理解、正しい使用を
ステロイドは本来私たちの味方です。正しい理解を持っていれば、効力を十分に発揮して、皮膚疾患の治療に大きく役立ちます。いたずらに怖がったり、自己判断はせず、医師のアドバイスを踏まえて、しっかり治療に活用しましょう。