2017年 05月 16日
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自覚症状がないから怖い!夏に痛風・高尿酸血症の危険が高まる理由は?

GWの頃から気温25℃以上の夏日がちらほら。さて、夏に向けて注意したい病気のひとつが「痛風」です。尿酸値が正常な値を上回る「高尿酸血症」が長引くことで、ある日突然、関節の炎症による激しい痛み(痛風発作)が襲います。最悪の場合、腎機能が低下する症状「痛風腎」を引き起こし、人工透析が必要になったり寿命にも影響する恐れがあります。高尿酸血症や痛風、痛風腎を予防・改善する食事のポイントや、治療について紹介します。
高尿酸血症、放っておくと痛風の激痛が
人間ドックや健康診断などで測定される尿酸値。男女や年齢を問わず「7.0mg/dL」が重要な目安となっており、これを超えると高尿酸血症と診断されます。尿酸が尿としてきちんと排泄されなかったり、あるいは過剰に生産され体内に溜まった状態が続いているということです。
高尿酸血症の怖い点は自覚症状がないことです。生活習慣を改めずそのまま過ごしていれば痛風に発展してしまいます。尿酸には体内で溶けにくい性質があり、濃度が7.0mg/dL以上になると結晶化します。結晶は関節に溜まり、剥がれ落ちる時に痛風発作を引き起こします。これは剥がれた結晶を免疫細胞である白血球が異物とみなして攻撃するためです。剥がれ落ちるきっかけは、ストレスや疲労、激しい運動などです。
痛風発作が起こると、ある日突然、足の指、足首、ひざなどが赤く腫れ、激痛が走ります。初めての痛みが出る場所で最も多いのは、足の親指の付け根の関節です。痛みは1週間から10日ほどでしだいに治まりますが、1年以内に再び発作を起こすケースは少なくありません。
最も怖いのは、寿命に影響する「痛風腎」
尿酸の結晶が関節ではなく腎臓に沈着した場合、腎機能が低下する症状「痛風腎」を引き起こします。結石が腎臓にあるうちは自覚症状がありませんが、尿とともに尿路に流されると激しい痛みが生じます。痛風腎が進行した場合、腎不全や慢性腎不全、尿毒症(末期腎不全)へ発展してしまう可能性もあります。また、高血圧症や糖尿病を併発していれば、動脈硬化が進行し、さらに腎臓の状態が悪化してしまいます。このように、痛風自体の発作は一時的ですが、最も怖いのは腎機能障害なのです。そのために尿酸値をコントロールすることが重要なのです。
夏に痛風・高尿酸血症の危険が高まる理由とは?
一年の中で痛風発作が最も起こりやすい季節は夏です。なぜなら気温が上がる夏は体温調節のために大量の汗をかくからです。汗をかけば体の中の水分が失われ、尿酸を体の外に出すための尿の量が減ってしまうのです。尿酸は汗ではほとんど排出されません。高尿酸血症や痛風の人が尿酸値を下げるためには、1日あたり2リットルの尿を出す必要があるとされているため、汗をかく夏は他の季節以上にこまめな水分補給が必要です。
痛風・高尿酸血症の原因、プリン体とは?
痛風予防に気をつけている方の中には「プリン体ゼロ」のビールやアルコール飲料を愛飲している人もいます。しかし、プリン体をより多く含むのはお酒よりも食べ物です。日本痛風・核酸代謝学会の「高尿酸血症・痛風のガイドライン」によりますと、鶏レバー、マイワシ干物、イサキ白子、アンコウ肝酒蒸しなどは、100g当たりのプリン体300mg以上と極めて多い食品です。1日のプリン体摂取量は400mgが目安となっていますから、いくら「プリン体ゼロ」のビールやアルコール飲料を飲んでいても、おつまみの選び方を間違えば軽く上回ってしまう恐れがあります。
痛風・高尿酸血症の予防と治療
高尿酸血症や痛風は、男女で明らかな違いがあります。男性の方が圧倒的に多いのです。これは女性ホルモンに尿酸の排泄をうながす作用があり、女性の方が尿酸値が低くなるためです。男性の方が危機意識を高く持つ必要があります。
予防のためにできることのひとつが、プリン体を多く含む食べ物をなるべく控えることです。しかし、体内のプリン体のうち食べ物から摂取するのは全体の2割程度のため、他にも尿酸値の上昇を防ぐ対策が必要です。例えば、野菜や海藻類などアルカリ性の食品を十分に摂取することで、尿は尿酸が溶けやすいアルカリ性になります。また、尿そのものをしっかり出すために水分補給を欠かさないことも重要です。その際、果糖が多く尿酸値を上げてしまう清涼飲料水ではなく、水やお茶が適しています。気持ちの面では、ストレスを抱えると尿酸値が上がりやすくなるとされているため、軽い運動や趣味、睡眠でリラックスすることも有効です。
痛風になってしまった場合の治療には、まず目先の痛風発作に対処する治療と、根本的な問題である高尿酸血症を改善する治療があります。すでに痛風発作がある場合は非ステロイド抗炎症薬を、発作の前兆には白血球の働きを抑えるコルヒチンを使用します。一方、尿酸値を下げる薬物治療には尿酸が生産されすぎるのを抑えるもの(アロプリノールやフェブキソスタット)と、尿酸を体外に排出するもの(ベンズブロマロンやプロベネシド)の2通りがあります。また、服薬と同時に予防方法で挙げたような生活習慣の改善も欠かせません。