2017年 03月 30日
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過去の病気ではない!結核の症状と正しい予防法

結核を過去の病気だと思っている方も多いのではないでしょうか。しかし、結核は現在でも発展途上国を中心に猛威をふるい、日本でも年間約2,000人の結核患者が命を落としています。今回は、結核の症状や予防法について理解を深めていきましょう。
3月24日は世界結核デー
1882年の3月24日、細菌学者のロベルト・コッホ氏が結核菌を発見したと発表しました。この日にちなみ、WHO(世界保健機関)は、1997年の世界保健総会で3月24日を「世界結核デー」と制定。以来、毎年この日の前後には、世界各国で結核撲滅に向けてのイベントが開催されています。
結核ってどんな病気?
結核は過去の病気ではない
1950年代半ば頃まで、結核は日本人の死亡原因の第一位でした。患者数が減少していることもあり、現在では結核は過去の病気として捉えられがちです。しかし、近年でも毎年国内で約20,000人が結核に罹患し、そのうちの約2,000人が亡くなっています。
世界でも、発展途上国を中心に年間約900万人が結核を発症し、150万人が命を落としていると言われています。結核は決して過去の病気ではないのです。
肺結核の症状
結核は、結核菌が肺や腸、腎臓などの体内に入り込まれることで引き起こされる疾患です。日本では、肺の中で結核菌が増殖する「肺結核」が結核患者全体の8割を占めています。
肺結核の初期症状は風邪によく似ています。咳、痰、微熱、倦怠感などが現れますが、比較的軽い症状のため、はじめは結核と気づかないことも少なくありません。しかし、風邪とは違い、肺結核ではこれらの症状が2週間以上続きます。食欲減退や寝汗等の症状が出ることもあるので見逃さないようにしましょう。
肺結核は、放っておくと少しずつ進行していきます。悪化すると痰に血が混じるようになり、喀血したり、呼吸困難に陥って死に至ることもあります。
肺結核はどのようにして感染・発症するの?
肺結核に罹患している人が咳やくしゃみなどにより体の外に菌を出すことを排菌といいます。肺結核に罹患していても排菌していなければ人に感染する恐れはありません。しかし、排菌している場合には、結核菌を含んだ飛沫が空気中に放出されます。これを周囲の人が吸い込むことで、新たな肺結核の感染者となってしまうのです。
しかし、吸い込まれた結核菌の大半は、鼻や喉の繊毛によって体外へと排出されます。たとえ、結核菌が肺まで入り込んだとしても、体の免疫力に退治されて感染に至らないこともあります。
また、結核は感染したからといって必ず発症するとは限りません。感染していても、結核菌が体の免疫力に抑えられて増殖しなければ、発症しないケースもあります。しかし、免疫力で結核菌を抑えられない場合には、6ヵ月から2年程度の潜伏期間を経て発症します。
さらに免疫力によって発症が抑えられていても、感染していれば結核菌が体内に潜伏しているため注意が必要です。加齢や他の疾患が原因で免疫力が落ちたときに、感染から10年以上経過して結核が発症することもあります。
結核に罹患しやすい人とは
ではどのような人が結核を罹患しやすいのでしょうか。具体的にみていきましょう。
・乳幼児
体の免疫機能が未発達な乳幼児は、結核菌を抑え込む免疫力も弱いため、結核に罹患しやすくなります。
・高齢者
体の免疫機能が衰えている高齢者も結核に罹患しやすくなっています。
・糖尿病患者
糖尿病患者は免疫機能が低下していることが多く、結核にも罹患しやすくなります。
・HIV感染者
HIVに感染すると免疫力が低下するため、結核にも罹患しやすくなります。
・生活習慣が乱れている人
不規則な生活により栄養バランス等の生活習慣が乱れている人や喫煙者は、免疫力が低下していることが多く、結核に罹患しやすい状態です。
結核は早期発見と予防が重要!
医学の進歩により治療法が確立されてから、結核は早期に発見して治療を行うことで治癒が見込める疾患となりました。肺結核の初期症状にみられるような咳、痰、微熱などが続くようなら、医療機関を受診しましょう。
肺結核を診断する検査
肺結核の検査は、感染と発症どちらを診断するかで方法が異なります。
結核菌への感染を調べる場合には、ツベルクリン反応検査やインターフェロンガンマ遊離試験を行います。ツベルクリン反応検査は、ツベルクリン液を注射して皮膚の状態を確認する方法です。結核菌に感染していたり、過去にBCG接種を受けていたりすると皮膚が赤く反応します。インターフェロンガンマ遊離試験は、血液検査によって結核菌への感染を診断します。
発症を診断する際には、胸部X線検査や喀痰検査を行います。X線検査では肺に影がないかを、喀痰検査では痰に結核菌が含まれていないかを調べます。
肺結核の治療法
肺結核と診断されて排菌している場合には、他の人に感染させる恐れがあるため、約2~3ヵ月程度の入院治療を行います。肺結核を発症していても排菌がない場合には通院治療も可能です。入院でも通院でも服薬を中心とした治療が行われますが、途中で勝手にやめてしまうと、結核菌が薬に対する耐性を持ってしまうことがあります。肺結核の薬の服用期間は、症状にもよりますが一般的に約6ヵ月間です。医師の指示がある間はきちんと服薬を続けるようにしましょう。
結核の感染や発症を予防するには
結核の感染や発症は、体の免疫力を高めることで予防できます。
結核菌が体内に入り込んでも、免疫力で退治できれば感染することもありません。また、たとえ感染しても、免疫力によって結核菌の増殖を抑えることができれば発症しないで済むのです。免疫力を高めるには、ストレスを溜めずに規則正しい生活を送ることが大切です。普段から栄養バランスのとれた食事をはじめ、適度な運動や十分な睡眠を心がけましょう。
罹患率が減ったとはいえ、結核は決して過去の病気ではありません。咳や微熱などの症状が続く場合は医療機関を受診するようにしましょう。また生活習慣を見直して、免疫力を高め、結核にかかりにくい体を作ることも大切です。