[第3回]COPD、早期発見のために

COPDを疑うのは、どんなとき?

前回までで、COPDの現状や病態や早期発見すれば治療が可能になってきているということをお話しました。今回は、実際にどのような場合にCOPDを疑ったらよいのか、また医療機関ではどのように診断されるのか、そもそも何科へ行けばよいのかなどについてお話していきたいと思います。

ではまず、どのような場合にCOPDを疑うのかについて見てみましょう。
●40歳以上でタバコを吸っている人
●過去に1箱×10年間(10 pack years)以上の喫煙をしたことのある人
●せき、たんが絡む、あるいは、運動したときに息切れがある人
こういった人は、COPDを疑う必要があるかもしれません。

風邪をひいたときなど、せきやたんが長引くことや、坂道や階段などを歩いたとき同年代の人より歩くのが遅れてしまうことはないでしょうか。こうしたことに心当たりがある人は、「普段はなんでもないから、年のせいだ」などと考えずに、COPDを疑って一度検査してみたら良いと思います。

COPDの診断、どんな検査をするの?

では、COPDが疑われたとして、どのような検査をするのでしょうか。
COPDの閉塞性というのは、「呼吸機能検査において、閉塞性換気障害を呈する」という意味ですので、呼吸機能検査がもっとも重要な検査です。

これは、スパイロメーターという簡単な機械を用いて行います。聞きなれないかもしれませんが一般的な機械で、学生のときなど肺活量の検査の経験があると思いますが、実はあれもスパイロメーターの一種です。

COPDの診断は簡易スパイロメーターがあればおおよその診断は可能で、最近では呼吸器科に限らず一般の内科系開業医の先生でも持っていることが多いので、もし糖尿病や高血圧などでかかりつけの先生がいるのでしたら、一度、お尋ねになってみてもよいでしょう。
この簡易スパイロメーターによる検査での異常の有無がおおよその診断の目安となり、さらに臨床症状と胸部レントゲンなどの画像検査と合わせて、COPDを診断します。

ちなみに、最近の肺機能検査では肺年齢という指標が表示されるものもあります。これは、たとえ正常範囲であっても実年齢より高い肺年齢を示した場合には肺機能が低下していることがわかりますので、患者さん自身の禁煙の動機づけや定期的な経過観察の必要性が理解できるという利点があります。

一度は呼吸器科を受診するのが理想

もしも検査でCOPDと診断されたら、そのままその医療機関で治療をすることもあると思いますし、医師の判断によっては呼吸器内科のある病院に紹介されることもあるでしょう。

私の勤める病院を例にもう少し検査についてお話すると、COPDを疑われて来院された患者さんには詳しい肺機能検査と胸部レントゲンに加えて、ほぼ全例に胸部CTを撮影します。
これらで、前回お話ししたような気管支や肺の変化を評価しています。

それともうひとつ重要なことですが、肺癌の併発がないかを慎重に判断しています。なぜかというとCOPDの患者さんは肺癌のリスクが非常に高いためです。実際に私の勤める病院でも年に数例は初診時のCOPDの検査において肺癌を発見しています。

ですから、COPDの診断と治療自体は呼吸器科でなくても十分可能ですが、私としては、こうした肺癌のリスクのことなども考えると一度は専門医のところで診断を受けることをお勧めします。
専門医が評価して治療方針を決定し、お近くの病院やかかりつけ医の先生と連携しながら治療をしていくというのが理想的だと思います。

著者プロフィール:北 英夫(医師)
1987年京都大学医学部卒業。1998年より高槻赤十字病院 呼吸器科に勤務、2007年より呼吸器アレルギー内科(呼吸器科部)部長に就任。京都大学医学博士、京都大学臨床教授。
専門分野は呼吸器内科全般、睡眠時無呼吸症候群、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、喘息。
日本呼吸器学会専門医・指導医、同代議員、日本内科学会認定内科専門医、指導医、同評議員、日本呼吸器内視鏡学会専門医、日本アレルギー学会専門医、日本感染症学会会員、日本睡眠学会会員、日本肺癌学会会員、日本呼吸ケア・リハビリテーション学会評議員。

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