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高血圧治療薬の種類と最新動向

降圧剤にはたくさんの種類があり、症状に応じて処方されます。
2〜3種類の薬を組み合わせて併用することもよくありますが、
近年では2つの薬の成分をまとめた配合剤が数多く開発されました。
現在は発症を予防するワクチンなどの研究も進んでいます。
よく使われる高血圧治療薬の種類と最新動向をご紹介しましょう。

降圧剤単剤と配合剤での治療将来的にはワクチンによる予防も
降圧剤の種類

高血圧の治療薬「降圧剤」には、血管を広げる薬、心臓の過剰な働きを抑える薬、余分な水分・塩分を排出する薬など、さまざまな種類があり、個々の患者さんに合わせてもちいられます。よく使われているのは次のような薬です。

薬の種類 作 用 特性・副作用
Ca拮抗薬(カルシウム拮抗薬) 血管の筋肉を収縮させる働きをもつカルシウムイオンが、細胞内に入るのを抑えて、血管を広げる。 頭痛、動悸、ほてりが起こることがある。
ARB (アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬) 血管を収縮させて血圧を上げるホルモンであるアンジオテンシンⅡの働きを抑えて、血管を広げる。 めまい、動悸が起こることがある。
ACE阻害薬 (アンジオテンシン変換酵素阻害薬) アンジオテンシンⅡを生成する酵素であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)の働きを抑えて、血管を広げる。 痰をともなわない咳(空咳)が起こることがある。糖尿病、脳卒中、心筋梗塞にも有効。
レニン阻害薬 アンジオテンシンⅡの生成に関わる酵素であるレニンの活性を抑えて、血管を広げる。 頭痛や下痢が起こることがある。
α遮断薬 血管にあるα受容体を遮断し、血管を広げる。 立ちくらみを起こしやすい。
β遮断薬 心臓にあるβ受容体を遮断し、心拍出量を減らして心臓の過剰な働きを抑える。 安静時の心拍数が通常より少ない徐脈を起こすことがある。
利尿薬 体内の余分な水分・塩分・カリウム・老廃物の排出を促し、血液量を減らす。 腎臓が悪い人は、尿酸の血中濃度が高くなる高尿酸血症を起こすことがある。
配合剤のメリット・デメリット

最近では、2つの薬の成分を合わせた「配合剤」が次々に開発され、1錠の服用で2種類の作用が得られるようになりました。

配合剤には、次のようなメリットがあります。
○服用する際の種類が減って飲み忘れなどを防ぐことができる
○単剤よりも効果を高めることができる
○薬代の自己負担が軽減される

一方で、副作用が出た場合、どちらに原因があるのか判別しにくい、用量調節が困難というデメリットもあります。

○1回に服用する薬の数が減り、飲み忘れや服用ミスを防げる
○単剤より降圧効果が大きい(相加あるいは相乗効果)
○薬代の自己負担が軽減される

○用量調節が困難
○どの合剤が適切なのか、わかりにくい
○副作用がでた場合、どちらに原因があるか判別しにくい

よく使われるのは、「ARB+Ca拮抗薬」。
降圧効果が増強されるので、1つの薬剤では効果が不十分な場合などに使われます。
日本人に多い塩分過剰摂取には、「ARB+利尿薬」の降圧効果が期待できます。
これは利尿薬を、尿を増やす薬としてでなく脱塩剤ととらえているのがポイントです。
ほかに、脂質異常症を併発している場合、コレステロール低下薬であるスタチンを配合した
「Ca拮抗薬+スタチン」をもちいるといった使い分けもされています。

次世代の高血圧治療

現在、高血圧ワクチンの研究が、実現に向け着々と成果を上げつつあります。

2007年に発表されたのは、アンジオテンシンⅡに対するワクチンで、高血圧に対する新しい治療法として期待されています。
3回のワクチン接種(皮下注射)により、大きな副作用もなく降圧効果が確認されています。

さらに、経口タイプのワクチンも開発中です。
これは、胃で消化されない米の貯蔵体(タンパク質顆粒)にワクチン抗原を組み込み、
その米を食べることによってワクチンの接種ができます。
主に、感染症に対して開発されていますが、花粉症などのアレルギー疾患や、高血圧に対する応用も期待されているようです。

高血圧の発症予防効果を検討した研究も報告されています。

高血圧治療ガイドラインの分類で正常高値血圧(収縮期血圧130〜139、または拡張期血圧85〜89mmHg)の場合、
心血管疾患の発病率と高血圧への移行率が高いことが指摘されています。
ARBであるカンデサルタン、ACE阻害薬であるラミプリルは、
正常高値血圧患者からの高血圧の新規発症を抑制することが確認されました。

次世代では、血圧をコントロールする降圧剤の改良のみにとどまらず、
発症の予防や、より早い段階からの治療といった面でも大きな進展が見られることでしょう。