[第1回]その息切れ、年のせいじゃないかも?

知っていますか? COPD

皆さん、COPD をご存知でしょうか。
なにか、難しそうな名前で珍しい病気だと思いますか?
いえ、決して珍しい病気ではありません。

COPDは正式には「Chronic Obstrucutive Pulmonary Disease」といい、日本語でいうと「慢性閉塞性肺疾」です。少し前までは「肺気腫」「慢性気管支炎」と呼ばれていました。これなら、聞いたことがあるのではないでしょうか。

最近の調査によると、40歳以上の日本人のうち、なんと約10人に1人、約530万人もの人にCOPDの疑いありと報告されています。
その多くはCOPDとは診断されていない潜在的な患者で、病院で治療されているのはわずか17万人に過ぎません。
また、その大部分が65歳以上で、軽症例が多いことも明らかとなっています。

近年、このCOPDにかかっている人の数は増え続け、現在では日本人の死亡原因の第9位。世界的に見ても増加傾向にあるのは同様で、WHO(世界保健機構)は2030年には死亡原因の第3位となるだろうと予想しています。

つまり、ますます多くの人が、知らぬ間にCOPDに罹患し、本人の自覚のないままに進行して亡くなっていくというのです。


COPD、どうして気づかないの?


それでは、どうしてCOPDは気づかれないのでしょうか。

それは、せき、たんが絡む、息切れなど、COPDの症状がごくありふれたものだからです。
COPDは煙草を吸う人がなる病気ですので、こういった症状が出ていても、ほとんどの人が煙草のせい、風邪のせいだと考えてしまうようです。

患者の多くが65歳以上ということもネックで、たとえ坂道などを歩いて息切れがあっても、多くは年のせいだろう、体力が落ちたせいだろうと思ってしまうわけです。やっかいなことに、日常生活程度では息切れの症状もあらわれないので、そのまま放置されて喫煙を続け、知らぬ間にどんどん進行していくのです。

そうして、風邪をひいたときに息切れなどの症状が急に強くなったり、あるいは、普段の息切れがだんだん強くなったりしてはじめて医療機関を訪れ、進行したCOPDと診断されるのです。

また、以前は禁煙すること以外に有効な薬物治療がなかったので、医療機関側も専門医以外は、早期から積極的に診断されなかったこともあったかもしれません。しかし近年では、治療薬の開発が進み、早期に適切な治療を受けることにより症状を改善することができるようになりました。
したがって、できるだけ早く発見すること、そして適切な治療を行うことがますます重要になっています。

このコラムでは、皆さんも(もしかしたら将来)知らぬ間にかかって進行してしまうかもしれないCOPDをよく知っていただくため、どういう病気なのか、その原因や喘息との違い、検査と診断、現在主流で行われる治療法など、順次お話していきます。


著者プロフィール:北 英夫(医師)
1987年京都大学医学部卒業。1998年より高槻赤十字病院 呼吸器科に勤務、2007年より呼吸器アレルギー内科(呼吸器科部)部長に就任。京都大学医学博士、京都大学臨床教授。
専門分野は呼吸器内科全般、睡眠時無呼吸症候群、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、喘息。
日本呼吸器学会専門医・指導医、同代議員、日本内科学会認定内科専門医、指導医、同評議員、日本呼吸器内視鏡学会専門医、日本アレルギー学会専門医、日本感染症学会会員、日本睡眠学会会員、日本肺癌学会会員、日本呼吸ケア・リハビリテーション学会評議員。

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