治験って何?
すべてのクスリは治験というプロセスを経て私たちの手元に届きます

病院で処方されるさまざまなクスリ。ドラッグストアの棚に並ぶ色とりどりのクスリ。私たちはたくさんのクスリを目にしています。
数千種類にもおよぶクスリ。実はそのひとつひとつ、すべてのクスリは、開発からおよそ10年〜15年という時間をかけて作られ、私たちの手元に届けられたものです。
治験はクスリの誕生にとって、とても重要な役割を果たしています。
基礎研究、非臨床試験を経た新しいクスリの候補、
それはきちんとした効き目のあるもの、安心して使えるものだろうか。
ボランティアの人たちの協力でその安全性と有効性を確かめるプロセスが治験──治療薬の試験──なのです。
あらゆるクスリは治験という道のりを通ってきたもの。
私たちが手にしているクスリ、これから手にするであろうクスリは、日本、そして世界で治験に参加したボランティアの人たちからの贈り物なのです。
科学の発達にともなって、クスリは目覚ましい進歩を遂げました。たとえば、かつて不治の病、死の病と呼ばれた赤痢、コレラ、ハンセン病などは、今ではそれほど怖いものではなくなりました。けれども治療法が確立された病気はわずか30パーセントにすぎないと言われています。70パーセントの病気は、まだはっきりとした治し方がわからないのです。

AIDSやガンといった誰もが怖れる病気のクスリだけでなく、糖尿病、高血圧症のような生活習慣病のクスリ、コンタクトレンズや禁煙補助剤のような生活の質を改善するためのクスリ、医薬品の開発は日々休むことなくつづけられています。そこには治験に参加されるボランティアの人たちの協力が求められています。
「クスリの候補──治験薬」は安全性と効き目がしっかり証明され、それが国に認められなければ「クスリ」にはなりません。
国・厚生労働省からその承認を受けるためには、多くの資料を提出しなければなりませんが、そのひとつに「クスリの候補を実際に人が使用してみて、どういうふうに働いたか」という臨床試験のデータがあります。
治験とはつまり「厚生労働省の承認を得るために行なわれる臨床試験」のことなのです。
治験という道のりを通らなければ、どんなに素晴らしいクスリでも使えません。
これまでなかったクスリ、よりよいクスリ、未来のクスリが生まれるために、多くのボランティアの人たちが治験に参加してくれることを願います。
ひとつの「クスリの候補」が「クスリ」として一般的に使われるまでには、基礎研究、非臨床試験、治験など、開発におよそ10年〜20年という長い時間がかかります。
基礎研究 2〜3年
研究者や科学者がクスリの基となりそうな成分を見つけ、クスリになる可能性や価値があるかどうかを調べる。
非臨床試験 3〜5年
製剤の開発と、それらの安定性の確認を行なう。その他に、動物を対象にしてクスリの安全性や効き目を、また、さまざまな効果や吸収、排泄、毒性なども調査する。
臨床試験(治験) 3〜7年
次の3段階に分けて、クスリの用法、用量、効果などの絞り込みを行なっていく
フェーズ1(第1相)試験
少人数の健康な成人を対象にして
- クスリの安全性の確認
- 体内への吸収、分布、代謝、排泄の状態
などを調べる。
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フェーズ2(第2相)試験
少人数の患者さんを対象にして
- 病気を治す効果があるか
- クスリの使い方(用量、服薬期間、投与間隔)
- 安全性などを調べる。
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フェーズ3(第3相)試験
多数の患者さんを対象にして
- クスリの安全性
- クスリの有効性
- クスリの使い方(用量・服薬期間・投与間隔)の最終確認を行なう。
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承認審査 〜3年
製薬会社がすべてのデータをまとめ、厚生労働省に申請。審査を経て承認が得られると、はじめて販売可能なクスリとなる。
製造販売後調査 4〜10年
製薬会社はそのクスリの製造販売後も有効性、安全性を確認することが義務づけられているため、さらに調査が行なわれる。
健康な成人の方※が参加する試験
治験には、大きく分けて3つの段階があります。その第1ステップである、健康な成人の方※を対象にして行われるものをフェーズ1、第1相試験と呼んでいます。
※クスリの種類により、なにかの症状をお持ちの方を対象に行なわれる場合もあります。
フェーズ1(第1相)試験は、主にクスリの安全性の確認が第一の目的ですが、血液などの生体資料からクスリを分析する方法が確立できている場合には、体内での吸収、分布、代謝、排泄の状態も調べます。そのクスリの候補は安全に使うことができるものか、服用後にその成分はどのようにして体内に吸収され、広がり、排出されていくのか、これが基本的な調査範囲となっています。
吸収
口から入ったクスリ※は食道を通って胃に入り、クスリの形が壊れる崩壊が起きてクスリの成分が胃液などに溶解しはじめます。溶けたクスリは、胃、あるいは小腸で吸収されます。
※治験によっては、飲むクスリではないこともあります。
分布
吸収されたクスリは、血液やリンパの流れにのって体内を巡り、目的の場所まで運ばれて作用します。
代謝
クスリはいつまでも体内に残ると害になることもあります。そのため、腎臓や肝臓でからだの外に出しやすいかたちにされます。
排泄
役目を終えたクスリは、尿、便、呼気、汗などとして体外へ出されます。
治験のスケジュール
フェーズ1(第1相)試験には、何回かの通院でおわるもの、2泊3日くらいの短い入院が必要なもの、2週間くらいかかる長い試験など、さまざまなかたちがあります。成人の男性を対象としている場合が多いですが、最近は女性が参加できる試験も増えています。
治験スケジュール例──2泊3日の治験の場合

治験が行われる場所
インクロム・グループには治験を専門に行なっている病院・クリニックがあります。1983年に大阪に開院して、現在は大阪の2か所、東京の1か所で治験を扱い、フェーズ1(第1相)試験は、大阪・吹田市と新大阪の2か所が実施しています。
なかでも新大阪に2005年に開院した治験病院は、治験のための病院として日本ではじめて認可されたものです。この病院にはインクロム・グループの24年間・1300試験を超える治験から得られたノウハウが活かされています。
フェーズ1(第1相)試験を終えて、基本的な安全性と効果が確認できたクスリの候補はフェーズ2(第2相)試験に移行し、それをクリアしてフェーズ3(第3相)試験に進みます。
フェーズ2(第2相)試験では、病気を患っている人を対象に、クスリの候補の安全性と、実際のその病気に対して有効に作用するかどうか、そして使い方(使う量、期間、間隔)を調べます。
フェーズ3(第3相)試験では、安全性や有効性を確認するため、数多くの患者さんを対象に大きな規模で実施されます。国内では千人単位の、また国外では数千人単位の大規模な試験が最近は行われています。
インクロム・グループの医療機関で実施されるフェーズ2&3(第2&3相)試験の多くは、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病や骨粗しょう症、アレルギー性疾患などのよく知られた病気を対象としていて、通院が可能な試験が中心です。試験のスケジュールはそれぞれに異なりますが、日常生活に支障がないように計画されています。
治験スケジュール例──このような治験が行われています
| 募集要項 |
内容 |
参加期間 |
| 20歳〜70歳 |
フェーズ2(第2相)試験 高脂血症のクスリ |
外来10回/16週 |
| 20歳〜64歳 |
フェーズ2(第2相)試験 ドライアイのクスリ |
外来5回/8週 |
| 20歳〜75歳 |
フェーズ2(第2相)試験 緑内障(高眼圧症)のクスリ |
外来10回/34週 |
| 20歳〜64歳 |
フェーズ2(第2相)試験 不眠症のクスリ |
外来6回/5週 |
| 20歳〜75歳 |
フェーズ3(第3相)試験 糖尿病のクスリ |
外来10回/34週 |
| 20歳〜70歳 |
フェーズ3(第3相)試験 高血圧症のクスリ |
外来15回/52週 |
| 20歳〜70歳 |
フェーズ3(第3相)試験 気管支喘息のクスリ |
外来9回/28週 |
| 20歳〜64歳 |
フェーズ3(第3相)試験 通年性アレルギー鼻炎のクスリ |
外来3回/3週 |
治験には、参加される方にとってメリット、もしくはデメリットとなるかもしれないいくつかの要素があります。ここでは主にフェーズ2&3(第2&3相)試験に参加された場合のメリットとデメリットと考えられるものをリストアップいたしましたので、ご自身で、またご家族などの意見も参考に、慎重に検討していただければと思います。治験は参加される方の自由意思に基づいて行われるものですから。
メリット
最先端の治療
これまでの治療ではあまり効果が見られなくて症状にも変化がなく、悩まされつづけている人にとっては、開発中の新薬(治験薬)は今までのクスリにはない効果を期待できます。
専門医の丁寧な診察
長い待ち時間と短い時間の診察という一般病院での受診にくらべて、長い時間をかけたより詳しい検査が行われ、豊富な経験を持つ専門医師の丁寧な診察とアドバイスを受けられます
病気の状態を正確に把握
通常の診療にくらべて、専門医による精密な検査・診察が受けられ、その病気についての詳しい説明も行なわれるので、ご自身のからだの状態や症状について、より詳しく知ることができます。
診療は無料
治験に参加されている間、治験薬や診察、検査などの費用は製薬会社が負担します。また、通院のための交通費などについては負担軽減費をお渡ししています。
社会貢献
あなたの協力で生まれた新しいクスリが、多くの人の病気を治します。ボランティアとして治験に取り組み、次の世代により良いクスリを残すこと。あなたからの贈り物は、よりよい社会の実現に向けて届けられます。
デメリット
来院回数、検査回数、通院時間
クスリの効果や安全性を確認するために、一般的な治療とくらべて、来院回数や検査回数が多くなることがあります。また、治験は特定の病院で行なわれるので、通院に時間がかかる場合もあります。
規則正しい服薬や来院
治験薬を正しい時間に服薬すること、決められた日時に来院すること、服薬の記録やからだの状態などを記録しておくことなど、守らなければならないルールがあります。ほかにも、激しい運動や食事のメニューなどが制限されることもあります。
プラセボ(偽薬)の可能性
治験には、クスリとして効果のある成分が入っていないもの(プラセボ)を使用することがあります※。治験薬がほんとうに効いたのか、それとも「効く」という思い込みによるものかを比較するためです。
※倫理的な観点から、類似した薬効を持つクスリを用いることもあります。
副作用の可能性
未知の副作用が生じる可能性を完全に否定することはできません。もちろん、十分な安全性の基に治験薬は扱われますが、もしも副作用が生じた場合は、適切な治療、補償が受けられます。
治験はボランティアとして参加される人たちの協力によって成り立っています。
その大切な意思を守るために、治験には厳しいルールがあります。
人権と安全を守るGCP
治験を行なうには、守らなければならない国際基準のルールがあります。これはGCP(医薬品の臨床試験の実施の基準/Good Clinical Practice)と呼ばれ、参加する人の人権、安全、福祉の保護が謳われて、治験が倫理的、科学的に行われることを──日本では厚生労働省の省令(法律)として──定めたものです。インクロム・グループが実施する治験はすべてこのルールに忠実に従って行われています。
これまでにインクロム・グループの行った1300を超える試験で、重大な副作用・感染症や事故が起きたことは一度もありません。私たちはボランティアのみなさんの安全を第一に考えています。
治験審査委員会
治験審査委員会は、インクロム・グループとも製薬会社とも利害関係を持たない組織で、治験をはじめる前に、それは科学的に妥当なものか、参加するボランティアの人たちの人権、安全、福祉が保証されているか、治験を行なう医師は適切か、それらについてさまざまな角度から厳しく審査します。委員を務めるのは、医学者、薬学者、大学教授などの学識経験者、医師、薬剤師などの医療専門家、宗教家、弁護士など他の分野の専門家、一般社会人などで、その構成や業務は上記のGCPに定められています。
治験審査委員会はどこかに疑問のある治験を許可しませんし、許可がなければどのような治験も行なうことはできません。
インフォームドコンセント
治験の参加にあたっては、内容について口頭で説明し、詳細が記載されている説明文書をお渡ししています。普段の診療でも行われていることですが、わからないことや疑問点があれば納得できるまで説明を受けられますし、家族や友人に相談することも可能です。
治験について十分に理解をしたうえで、自分自身の意思で参加・不参加を決めてください。そして、参加を決められても、もしくは参加されてからでも、いつでもそれを取りやめることができます。
インフォームドコンセントにおいて、詳しい説明の行われる項目です
- 治験の目的
- 治験薬について考えられる性質(効果や副作用など)
- 治験の内容(検査内容、服薬指導、期間など)
- 治験参加中に健康を害した場合の対処方法